第86話

あの日以来、裕太は私を抱かない。

抱き寄せてキスはしてくるけど、手を出してこなくて。

私が裕太を好きになるまで⋯。


どうすれば私は、裕太を好きになるのだろうか。




「⋯してもいいよ」



私の部屋で、キスをしてくる裕太を見上げる。裕太は、少し戸惑う様子を見せて、私を抱きしめてくる。



「俺の事、好きになった?」


「⋯⋯裕太⋯あのね⋯」


「なってねぇのに、そんな事言うな」



―――じゃあどうすればいいの?


こんな気持ちのまま⋯。


私も‘例外’になりたいなんてこと。




「早く俺を好きになれよ」




こんなの、裕太に失礼すぎる⋯。


私の中で、良くんだけが‘例外’なのだと。


裕太じゃないなんて、言えるわけがない。

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