第85話

こんな気持ちになるのが嫌で、溜まり場からの帰り道、私の家まで送ってくれた裕太に抱きついた。



「どうした?」



穏やかに笑う裕太。



「⋯なんでもない⋯」



私は、そう言って、裕太を見上げた。

優しく笑っている裕太。私のタイプな人。


それなのに、私は裕太に「好き」とは言えずにいて。



「⋯あがってく?」


「いいの?」


「うん、誰もいないし」



いつも、いないけど。



「じゃあ、お邪魔しようかな」



頭を撫でてくる裕太を、もう一度抱きしめた。

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