第35話

密偵⋯、スパイってこと。



「私の事、信用してくれてるって事ね」



ここへ連れてくるってことは。



「だな、俺は莉子で二人目」


「それムカつくから言わなくていい」



私は、手を繋ぐ裕太をちらりと見た。裕太は私の視線に気づき、優しい笑顔を向けてきて。




「俺は遥が初めて」




莉子と潤くんの会話が聞こえていたらしい裕太は、穏やかにそう言って。


少し嬉しくなった私は、もしかしたら裕太の事が好きなのかもしれない⋯とか、思ったりして。




まだ完全に裕太の事を好きになれていない私は、「うん」とは言ったことはあるけど、直接裕太に「好き」と言えないでいた。

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