第84話

「いないよ」


そう言って、私は薫の方から目を逸らした。

彼氏は今までいた事がない。

好きになった人はいた。

でももう、私の中で男の人は“いい存在”では無いから。





「────···じゃあさ」


ふと、薫の声が低くなった。



「俺と付き合わねぇ?」


薫の言葉に驚いて、コーラを飲む手が止まる。



「お前のこと、好きなんだけど」


私は多分、目を丸くして薫を見ていたと思う。

薫は雑誌から顔を上げて、私の目を見つめる。

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