第64話

朝の目覚めは、壱成さんの腕の中。

しっかりと私を抱きしめていたらしい壱成さんはまだ眠っていた。眠っているのにこの力強さは、私と体つきの違いというか、筋肉の付き方が違うからだろうか?と、起きたばかりの頭でそんなことを考えていた。


私の体は、毎食食べるようになってから、少しだけ太った。太ったものの、お母さんの影響で元々が細かったから、今は平均よりも少し体重が軽いぐらいだった。


そんな私との体型と、壱成さんの体型は全く違う。


運動をしてない私の体は、どちらかというと柔らかい。日常時に困らないほどの筋力しかない。身長も平均並みしかない。


それに比べ壱成さんは背は高く、今眠って力が抜けているはずなのにここに筋肉があるとすぐに分かる。

私を腕枕をしているその腕も、目の前にある胸板も、こうして抱きしめられていることにより当たっている足も、筋肉質だと分かる。

男の人の体はこういう造りなのだろうか?

それとも壱成さんが筋肉質なのか。

私とは違い、逞しい壱成さんの腕。


そんな壱成さんの胸板を見ながら、昨日のことを思い出す。ベッドに運ばれたことは覚えている。それでも服を脱がされたことは覚えてない。気づけば裸だった。

気づけば壱成さんも裸になっていた。

私は記憶力がある方なのに、昨晩のことは──……。


ほとんど覚えていない。

壱成さんが「舐めるから大丈夫」と言っていた意味も、分かるような分かっていないような、そんな朝だった。



少しだけ体を動かせば、下腹部に痛みでないけど違和感がして、顔を歪ませれば、壱成さんの腕がピクリと動いたような気がした。

裸のまま、壱成さんの腕が私を抱き寄せる。


痛くない力強さで抱き寄せた壱成さんは、うっすらと目を開けると、私と視線を絡ませた。まだ虚ろの瞳の壱成さんは、もう一度目を閉じると少し体を動かした。



「……何時だ?」



横にいたはずの壱成さんが、慣れたように私の上に来て腕をつく。腕枕をしていた私の頭を抱え込むように体位を変えた壱成さんは、私の耳元で呟いた。



「6時頃だと思います、すみません、起こしましたか?」


「…早いな」


「壱成さん今日はお休みなので、もう少し寝ますか?」


「ああ」



私を抱き寄せた壱成さんが、鎖骨あたりにキスをしてきた。朝から甘い雰囲気を出す壱成さんは、「昨日は、」と、そのまま唇で皮膚を伝い、首筋に顔を埋めてきた。



「痛くなかったか?」



痛く、



「は、はい、痛みなどは……」


「よかった」



柔らかいリップ音を出しながら、耳の裏にキスをしてきた壱成さん。

恥ずかしく、私は肩を縮めた。



「あ、あの、壱成さん……」


「……ん?」



壱成さんの腕が、布団の中で、私の太ももへと伸びていく。足を動かせばまた下腹部に違和感がして。



「私の中、まだ、何か入ってます?」


「…ん?なか?」


「……あの、中です」


「中って、ここか?」



太ももにあった壱成さんの手が、お腹の……下腹部当たりを撫でた。



「は、はい、」


「いや、何も入ってないはずだが……痛いのか?」



壱成さんが少し戸惑いながら言う。



「い、いえ、痛みはなく、」


「気持ち悪い?」


「そうではなくて、」


「変な感じがするか?」


「変な感じというか……、まだ、入っているような感覚が残っていまして」


「入ってるって、俺の?」


「そ、そうです、」


「あー…、ずっと挿れてたからだな」



照れたように呟いた壱成さんが、「もう1回、本物の感覚、感じてみるか?」と、少し体を起こし私の足を開いた。

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