第60話
「中は?」
中⋯。
中に、出す。
避妊具をつけず。
それを意味するのは⋯―――。
心の中で決心した私は海吏の耳元で呟く。
いいよ、と。
その刹那、背中に回していた手が私の頬をつかみ。海吏の唇が、勢いよく、私の唇を覆った。
歯が当たりそうな勢いに少し顔を歪めそうになったけど、それよりも壊れそうな海吏の心の傷を治すために、私は海吏の舌に応えた。
息を上手く出来ないほどのそのキス。
だけど、私の体に触れる海吏の手は、優しく。
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