第56話

「きつ⋯⋯」




海吏は辛そうに、酷く震える声でそう呟くと、体を起こし、自分の手の甲で目を隠すように涙をふいた。



きつい。


海吏の心の想い。



私のことを好きだから。

私を大事にして。

子供達も大事にしてくれて。


でも、そんな私は違う人を見ているから。




ごめんなさい。

そう思うのに、

私には謝る資格が無い。



私は体を起こし、泣いている海吏の首に腕を回し抱きしめた。




「似てる、似てるよ、兄弟なんだもん仕方がないじゃん⋯!」


「うっさいな⋯っ」


「でも、海吏は海吏だよ。代わりになんかできないっ」


「似てる似てる言ったのお前やんけ!」


「海吏っ」

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