第49話

「うん、でも、行かないって言ったよ」


私はそう言って、日本人離れした黒の瞳を見つめる。




「⋯なんで?」



なんでって、分かってるくせに。

でもそれを私に言わせたいのは、海吏自身が不安だから。いつまでたっても⋯。変わらない。



「私は海吏のでしょ?」


「⋯そうやけど」


「⋯不安?」




私が聞き直せば、海吏は私の首へ顔を埋め抱きしめる力を強めた。




「不安やで、ずっと。子供らに嫌われんよういつも必死や」



苦しそうに呟く男⋯。



「嫌うわけないよ」



私はそう言って海吏の背中に腕を回した。

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