第15話

海吏と、触れ合っていたわけじゃない。


だけど、その顔はすごく怒っている。



「ど、どうしたの」



私は慌ててルイの視線に合わせるようにしゃがみこんだ。

そばにいた海吏も、一瞬、戸惑った顔をして。すぐにいつもの表情に戻った海吏は、「なんや?」と、ルイの柔らかい赤髪を撫でた。



「だめ」


「何があかん?」


「まま! ぱぱみちゃだめ!」



見るな。



「ルイ⋯」


「ままのめ、ぼくの! みちゃだめ!」



私の目は、ルイの。



「とるからねっ!みたらっ、とるからね!」


「ごめんね、ルイ。もう見ないよ。ごめんね」


「ままのめ、とるから!!」


「ルイ⋯」


「うっ、⋯まま⋯、うわぁぁん⋯」



また大きな口を開けて、泣き出すルイ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る