第13話

これはあの建物にある時、雅にグラスで刺された傷痕だから。あの建物の中に私がいた事を知っているはずの海吏。


だから、隠す傷痕じゃない。




「言えるよ」



私は海吏に向かって微笑んだ。



「⋯」


「これは建物に居る時、雅さんにつけられたの。海吏も知ってるでしょ? 1年前に会ったでしょ?血を見たらって⋯。その人」


「⋯そうなん」


「この傷がどうかした?」


「いや⋯」


「海吏?」


「それ、お前のかーちゃん、つけたんかなって思ってた」


「え?」



海吏は凄く、悲しそうな顔をする。



「頭ん中機械入れられたって言ってたやん。やからちっさい頃、虐待受けてたんかなって」




ああ、そういう事か⋯。



だから言いたくなければって。



私を傷つけないように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る