第87話

入院してから、約2週間。

検診のため看護師に連れられて目的地へと向かう。歩くことも辛い⋯というか、歩く度に胃が揺れる感覚がして。


まだまだ妊娠悪阻がおさまる気配は無かった。




これもまたデリケートな問題らしく。

魁輝は病室に待つようにと言われ。

魁輝はしぶしぶ、病室に残っていて。



診察室の前で、椅子に座ってここで待つように看護師に言われ、何か用意をするためか看護師は診察室に入っていく。



廊下の椅子で待っている私は、持ってきていたハンカチで口元をおさえた。




気持ち悪い⋯。





どれだけ深呼吸しても、おさまらない。




早く魁輝の元に戻りたいと思っていた刹那、「大丈夫ですか?」と、苦しんでいる私の横で、誰かの声がした。



その方に顔を向ければ、黒髪の、優しそうな男の人がいて。

この病院の先生だって思ったのは、世那と似た白衣を来ていたから。

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