第83話

その日の夜、世那が家へとやって来た。


世那は私を見るなり、「辛そうだね」と言ってきて。本当に辛い私は、「忙しいのにごめんね」と、小さな声で伝える。




「何も食べれないって聞いたよ、一口も食べれない?」


「口に入れれば、吐いちゃう⋯」


「そう、飲み物は?」


「そ、れも⋯」


「いつから?」


「3日⋯、ぐらい」


「体重は?どれだけ減った?」


「3キロ⋯ぐらいかな⋯」


「そう、起き上がるのも辛い?」


「う、ん」


「トイレは?」


「飲んで、ないから⋯いきたいと、思わなくて⋯」


「うん、分かった」



何が分かったか分からないけど、今まで病院にいたらしい世那から、消毒の匂いがして。

その匂いさえ不快に思う私は、せっかく来てくれた世那なのに、早く部屋から出て行って欲しいと思うほどだった。

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