第77話

ずっと黙っていた魁輝は、深い息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。



「俺、外見のせいでいじめられてたんよな。中1ん時。そんで病院に運ばれて、入院してるときに性癖が出来た。絶対仕返ししたろうって思ってたけど、出来んかった。学校行くの怖なって」



魁輝の、背中の火傷⋯。

学校へ行くのが怖い。

それもそうだと思った。

あんな火傷を負わされて、怖くないはずがない。



「その主犯の弟が、頼ってやつ。俺と同級生」



頼⋯。

同級生?




「俺、退院した後、ばーちゃんとこおって。弟とは、会ってへんかった。たまに会ってたけど。そんな喋らんし。⋯16、ぐらいん時、メビウスから勧誘うけて来た。やからそのばーちゃんとこおる期間会わせたら4年ぐらい会ってない」



4年ぐらい⋯。




「やから、弟は俺の性癖のこと何も知らんはずやし。頼も、よう分からん。中学ん時以来⋯、会ってへん。恨む覚えはあっても恨まれる覚えないねんけど」


「なるほどね」



世那が相槌をうつ。



「陽向、その弟の性癖。何か分かる?些細なものでも、なんでもいいんだけど」



璃久が私に聞いてくる。


分かる、と思う。



だって、魁輝と同じだと思うから。

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