第76話

「じゃあ、原因は分かんねぇって?」


低く、そう呟いたのは、煌。




「魁輝の弟が言ってたぞ、建物から出れば頼(より)ってやつと、殺しに行くからって。 陽向の子、無事に産めればいいなって。やべぇんじゃねぇの」



璃久が、眉を下げながら言う。




確かに海吏はそう言っていた。


頼―――⋯。


誰、あの建物内にいた、私が見てない人物。


その2人が、私たちを狙ってくる。



それは、いつ。




「異常性癖を持っている人が、家族仲が悪いのはよくある話だよ。自分の性癖を認めてくれないから、家を出るってのもよくある話だし」


「まあ、それもそうだな⋯」


「けど、魁輝の場合は少し違うね。異常性癖を持つもの同士だから。認める認めないの話じゃない」


「だったらなんで仲悪ぃの」


「それは魁輝にしか分からないんじゃない?」



世那がそう言った瞬間、璃久の目が、魁輝に向けられる。

煌は不機嫌そうに腕を組んでいて。

世那はずっと何かを考えている様子で。



肩にもたれている私は、魁輝を見上げた。

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