バイストフィリア

第75話

「陽向が攫われたって聞いて、まず初めに思ったことは、‘妊娠’した陽向に、香坂十和子の異常性癖が反応したこと。陽向じゃなく、陽向の子を、殺そうとしたんじゃないかって」



数時間後、みんなが集まったリビングで、今までの話の流れを聞いて、世那がゆっくりと語り出す。




「香坂十和子が、どこからか耳にしたんだと思った」



耳した。どこから。



「でも、今回、シャッターを開きに数ヶ月ぶりぐらいに本部に行った時、香坂十和子の姿は無かった。半年ぐらい前から、香坂十和子は本部から外れてるらしい。だから今回の件は、香坂十和子じゃない確率が、高いってこと」



私のお母さん、ではない⋯。



「それから、魁輝と魁輝の弟の件。 正直、それはあの建物内で会わせるメリットっていうか、どうしてわざわざ会わせたのか分からない。―――偶然、にしては出来すぎてるけど」


「分からないって、世那、本部に行ったんだろ? 理由分かんねぇのかよ」


「行っても、俺は1年前のことで裏切り者扱いだから。 小早川の名前のおかげであいつらは俺に何もしてこないけどね」


「じゃあその名字つかって、聞き出せねぇの?」


「一応、パソコンの中に見ようと思ったけど、無理だった。パス、変えられてた。ちなみにこのパスコードを変える人間は、限られてる」


「世那でも分かんねぇの?」


「正直、1年前からノータッチだった。もうあの建物と関わりたくなかったし。実際、香坂十和子がいなくなったってのも、今日知ったんだ」



世那と璃久の会話を聞きながら、私はぼんやりと魁輝の肩にもたれかけていた。

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