第74話

魁輝に頭を撫でられながら、徐々に体が震えてきて。


開けっ放しの寝室の扉からは、「陽向は?」と、璃久の声が聞こえた。




「無事。けど、しばらくそっとしてあげた方がいい。話し合いはまた後で。今、精神的に参ってるから」


「精神的って、大丈夫なのかよ?」


「ストレスが1番の毒だからね」


「⋯そうか⋯、まあ、陽向は二度と、行きたくねぇ場所だったよな」


「また落ち着いたら、あとで手の手当をしに行くよ」




世那らしい人がソファに座る音が聞こえ、私は目の前にいる魁輝に身を任せた。




本当に、あたし、助かったんだ⋯。


魁輝のそばに戻ってこれたんだ。




良かったと、すごく安心する魁輝の腕の中で瞼を閉じる。



赤ちゃんも、無事で。



「良かった⋯」と、私の頭を撫でる魁輝が、本当に愛しくて。




「傍におらんくて、ごめんな」




私こそ、迷惑かけて、ごめんね。


だからそんな、悲しそうな顔しないで。


大好きだよ、魁輝。




ずっとずっと、私は魁輝が大好きだから。



―――⋯何があっても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る