第64話

璃久は海吏を見たあと、私を抱えている魁輝の方を見た。多分、きっと、璃久も同じことを思っているんだろう⋯。





「その子、どこ連れていくん、兄ちゃん」



―――兄ちゃん。



「置いていってや」


「兄ちゃんって、魁輝⋯、お前⋯弟か?」



戸惑う声を出すのは、璃久。


でもそれ以上に戸惑っているのは、魁輝自身だとすぐに分かった。私を抱きしめる力が、強い。





「お前、何でここおんねん⋯」


「なんで? なんでやろ? さあ?」



クスクスと、笑う海吏。




「さっきの子、やっぱおもんなくて殺しちゃった。その子ちょうだい」



さっきの子、それが結乃だと分かった時、絶望が私を襲った。


さっきまで喋ってた結乃が、亡くなった。

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