第56話

あ⋯と、目に届いたのは、さっき私に使ってきたローションが入ったボトルで。


あれを使えば、外れるかもしれない。


そう思って体を動かすけど、取れない。


足で⋯って、思っても、届かない⋯。




はやく、はやく、はやく外れて⋯!!




焦る私は、手錠から手を引き抜こうとするけど、皮膚が赤くなるだけで外れてくれない。




痛みで顔を顰めた時、外から「―――!!」と、誰かの怒鳴り声のような、モノが耳に届いて。




それにビクッと体を揺らした私は、はやく外さなきゃって、必死に手を抜こうとするけど。



なんで、抜けないの⋯っ!?



「―――!!」



涙で滑らそうと、手で顔をふくけど、雀の涙みたいなので。廊下から聞こえる怒鳴り声に、だんだん手も震えてきて、力が弱まっていく。

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