第52話

魁輝じゃない。


動けば、赤ちゃんが殺されるかもしれない。


下の方でぐじゅぐじゅと、音がする。



「お願い⋯、怖い⋯、やめて⋯」


「怖くないよ、エッチで子供は死なないよ」


「ぬ、いてっ、」


「もう、うるさいな。指、抜けばいいの?」



指が抜かれ、はっと、息を吐き出した時。

ガチャガチャと、音が聞こえた。



それは私の手錠の音ではなくて、唯斗の腰につけているベルトで。




うそ、そんな、




「やめ!いれないで!いれないでっ⋯!!」




上へと逃げる私の手首から、今度こそ手錠の音が鳴り響き。



「ダメだよ、逃げちゃ」



いとも簡単に、足を捕まれ引き戻される。



下半身に当たるその感覚に、ガタガタと体が震える。

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