第44話

廊下の方に顔を出し、誰かを呼ぶと、中へと入ってきて。ガタガタと震える結乃は、声も出せないみたいで。



「マジ? あ、ほんと。海吏(かいり)、どっちがいい?」



―――か、いり、?




また1人、中に入ってくる男は、ハニーブラウンのように髪は明るく。天然、っぽい、犬みたいにヘラっと、笑う雰囲気をもつ風貌だった。




「んー、そうやなぁ、俺はギャルっぽい子より⋯、―――こっちの方がええなあ」



中に、歩いてきて。

ベットに腰かける私を、笑いながら見下すワインレッドの髪の男。


かいり⋯。

名前も、似てる。



ねぇ、まさか、違うよね。



海吏と呼ばれた男が、私の方に手を伸ばしてくる。イヤ、というよりも、戸惑いが勝ってしまっている私は⋯。



顔にふれられる瞬間、やっと「さわらないで!」と声を出すことができて。咄嗟にふりはらい、お腹を両手でおさえた。



見下す海吏に下から睨みつければ、海吏はふっと、笑い。



「その目、ええなあ。欲しいわ」



残酷な台詞を、私に告げてくる。




―――ねぇ、違うよね?




魁輝に、兄弟なんて、いないよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る