魁輝の一緒に住み始めて3ヶ月ほどがたった時、魁輝から聞いたことがある。

―――あの中にいれば、麻痺する、って。

外の世界では、人を傷つけたり、ましてや殺人なんて絶対にしてはいけなくて。

だから魁輝もぐちゃぐちゃにしたいと思ってはいても、建物の中に入るまで、人を殺してないって言ってた。

―――「中に入ったらなあ、ホンマに自由にしてええんやって。なんて言うんやろな、今まで我慢してたもんが、我慢いらんくなって。おさえきかんくなんねん」

―――「自由？」

―――「俺も初めは躊躇ってたんやけど、実際、女で遊ぶヤツら見たらほんまにええんやって。それが当たり前になって⋯。人を殺すっていうのが麻痺してくる。あかん事やって、頭では理解できんねんけど、この建物は何してもええから。麻痺、してくんねん」

―――「⋯そっか」

―――「陽向」

―――「⋯ん、なに？」

―――「ほんまに、俺でええんか？」

―――「え？」

―――「俺、ほんま⋯何人手出したか、覚えてへんし」

―――「⋯」

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