第35話

「ここで生きるには、逃げることも大事ですけど、それよりも大事な事があって⋯」


「え⋯?」


「絶対、誰も信じちゃダメです。疑ってください。ここではどれだけ優しくされても、裏があるって思ってください」


「⋯裏⋯?」


「もちろん、私のことも⋯」


「⋯陽向さんも⋯?」


「はい、それぐらいの気持ちでいて⋯」


「⋯」



似たような会話を璃久とした事があるな⋯と、ぼんやりと思い出した。


あの後、私は璃久を信じることができなくなった。璃久が私に薬を盛ったと思ってしまったから。でも璃久は本当に私を助けようとしてくれた。



「私は結乃さんの味方だから⋯、一緒にここから出ましょう」




そう言って、私はゆっくり微笑んだ。

結乃を落ち着かせるように。






―――私はみんなを信頼してるから。


魁輝も、煌も、世那も、璃久も、雅も。




もしかすると、みんなが助けに来てくれるかもしれない。


私がここにいることに、きっと、気づいてくれる。




メビウス側の、世那がいるから。



世那は、私の味方だから。

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