第87話

「ナナは喧嘩はするけど、手加減してるし…。暴走族ならもっとやれよって思っちゃう。再起不能にしないと、あいつらバカだからやり返しに来るのにね。正直、ナナが族やってる意味がわかんないの。バイクは大事にしてるけど、なんだかそれよりも、…いやいや族してる、って感じ。それが腹たって仕方ない」


「…うん」


「なのに、今月の護衛をしてるから、ムカつくの」


「護衛をしてるから…?」


「ナナを嫌いなはずなのに、ナナが護れば絶対に月は危ない目に合わない、って思っちゃうの」


「…」


「本当に、自分自身にムカついて仕方ないよ」






自分自身にムカつくて仕方ないらしい流雨は、「だから晴陽、自分じゃなくて月を護れって言ったんだよ。ナナが月を護るって決めた日の翌日に。ナナなら任せられるから。本来なら2人を護る役目があるのに、今は月だけでしょ?」と、知らない事実を言ってくる。



「あのとき、煙草に吸ってなかったから、本心で月を護れって言ったんだよ」



──…煙草?



本心?

月を護れ?



何の話かと、流雨の方に顔を向けば、待ってましたかのように軽くキスをされた。



「たばこって…」


「ん?」


「どういう意味?」



軽く笑っている流雨は、自分自身の指先を口に当てた。




「晴陽、嘘つくときよく煙草吸うから。…これ、俺しか知らないから内緒だよ?」


「嘘…?」


「嘘ってより、自分自身の言葉に…、後悔してる感じかな?」

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