第86話

「……それって、1番狙われてるのって、私ってこと?」


「うーん…、それはちょっと違うかな。狙われてる、じゃなくて狙われやすいの」


「狙われやすい?」


「だって男と女の目的は、総長の晴陽だもん」



目的が、晴陽…。



「晴陽に女ができて、その女が姫になれば副総長の女は、〝姫〟から降りなきゃいけない。姫は2人もいらないから。だからほとんどの女は晴陽を狙ってる。そりゃそうだよね、副総長より総長の女の方がいいもん」


「……」


「男もね。晴陽のたまをとりたいから〝姫〟を狙うんだよ」


「…たま?」


「いのち、って意味ね」



命?


女と男からも狙われ

殺したい男がいるらしい晴陽…。


うそか、ほんとか。



「総長は大変だね」



くすくすと笑っている流雨…。

流雨は副総長なのに?



「…流雨は狙われないの?」


「俺はモテないもん。キチガイって有名だし。副総長って言っても、総長とはやっぱり差があるんだよ」


「そうなんだ…」


「月、シャンプー変えた?いい匂いする」



変えてない…。



「じゃあ晴陽は…、恨まれてる、ってこともあるの?」


「あるよ? だって俺らは族潰しで有名だから」


「族潰し?」


「俺らが有名になったのは、たくさんの族に手ぇ出して潰してるからだよ? 月もその時に捕まったの覚えてる?」



その時に捕まった…。

カケルという男がいる暴走族を潰すために来た流雨たち…。



「まあ、あの時は霧島の策だったんだけど」


「私がいた、…その族は…もう潰れてるの?」


「ううん、あの時は総長が不在だったからまだかな? でもほぼ壊滅」


「そう、なんだ…」


「早く潰したいんだけどね」


「……」


「副総長の遊佐がいなくなった今、あそこはもうダメだよ」



ゆさ…。



「……じゃあ、晴陽も、…殺したいほどの…人っているのかな…」



上手く、聞けたか分からない。

これが私の1番したかった質問だった。

晴陽の言ってることは、嘘か本当か。



後ろでは「うーん、」と、流雨は可愛らしく首を傾け。

私の質問にはあまり気にしていない様子だった。



「わかんない、晴陽ってたまに何考えてるかわかんない時があるから」


「…うん」


「俺はナナを殺したいけどね」


「…そんなに、柚李さんのこと、嫌いなの?」


「嫌いってより、ムカつくの」




私の体を包む流雨。

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