第88話

自分自身の言葉に後悔してる?

煙草に吸っている時?


そう思って記憶の中を探っても、あの人はいつも煙草を吸っている。ヘビースモーカーなのかな?って思うほど。

だって部屋に匂いがつくほどだし…。




「昔はあんなに吸ってなかったんだよ」


「昔…?」


「そう、本数が増えてるってより、後悔が増えてるっていうか…」


「…」


「だから月を俺のところにやる時、晴陽、煙草臭かったもん」


「…」


「霧島の時も…」


「…」


「なにも考えないようにずっと吸ってるね最近は」


「…」


「はるひ…ほんとに、何考えてるのかな?」


「…」


「…もしかしたら、ナナよりも、月を〝姫〟にしたことを嫌がってるのは晴陽かもしれないね」


「…」


「俺がナナを嫌いでも晴陽を好きな理由がそれなの」


「…」


「後悔しても、晴陽は自分の道を貫いてるから。ナナみたいにでもでもだってっていう女々しさがないから…」




そう言った流雨は、優しくちゅ…と肩にキスをしてきたあと、「あがろっか」と、湯船をゆらした。

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