第80話

あのメモは私の家にある。

スマホのアドレス帳を確認しても、その番号は登録されてなく。

誰か分からない番号。



〝ハルヒの事で話がしたい

誰にも知らせないで欲しい〟



もしかしたらイタズラかもしれない。

私が〝姫〟だから。

何かの罠って考えるのが妥当。



このことを護衛である柚李に言うべきなんだと思う。それとも彼氏である流雨に言った方がいいのか。


晴陽には…言わない。

もしかすると、〝晴陽が考えた罠〟かもしれないから。


でももし、本当に誰かからの、メッセージで晴陽が〝何を〟するか知っているのだとしたら…。


それを知るために、あの番号にかけた方がいいのだろうか。


誰か分からない相手に…。





いろいろな事を頭の中で考えていると、「月」

と晴陽に呼びかけられ。


晴陽に目を向ければ、晴陽は煙草の火を消しているところだった。



「考えたんだけどな?」



悪いと思ってる?

絶対に思ってないと思うけど…。



「お前はナナを早く帰らせて弟と遊ばせてあげたかったんだろ?」



柚李を弟と…。



口を閉ざしながら頷けば、晴陽は私の方に向きソファの肘掛で頬杖をついた。



「……一つだけ、あいつを帰してやる方法あるけどうする?」


「え?」



何をいうのかと思えば…。



「…ある、の?」


「あるよ、結構単純だけど」


「また私を騙すつもり?」


「騙すもなにも、聞けば納得すると思うけど」



納得すると思う?

本当に?

でも晴陽はいつも先を読むから…。



断った方がいいはずなのに、好きな柚李のことを言われては、断る、ことを躊躇ってしまって。



「……きく、だけ、きく」



そう言った私に、晴陽は鼻で笑ってきた。

そんな晴陽は私にはふれない。


晴陽は軽く笑ったまま。





「ナナを近衛隊長から降ろせばいい」




そう呟いて。

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