第70話

そんな晴陽は今日も呑気に煙草を吸っていた。


「外凄いよなぁ〜結構可愛い子いたし」とヘラヘラ笑っている御幸にもどんどんイラだってくる。




うそつき──…



私の姿を確認した晴陽は、「すごい顔」と笑っていて。奥歯を噛み締めた私は晴陽に近づく。



「話がある…」と。



分かってたような顔つきをする晴陽は、「奥、行く?」と首を傾げた。



奥…。私を閉じ込めて、何度も抱いた部屋。



悔しい…。



「どうして…」と、泣きそうになりながら呟いた私に、立ち上がった晴陽は「来いよ」と奥へと歩いていく。


けど、それを阻止したのは柚李で。



「話ならここでしろ、遠くに行くな」



同じ部屋の中なのに、遠くに行くなという柚李は晴陽を睨みつけた。



「それとも2人じゃないとできない話か?」



晴陽に抱かれてことを知っている男は、晴陽を警戒しているようで、私を護ってくれるらしい柚李は私と晴陽を2人きりにさせるつもりはないらしく。



「そうだな、総長と姫の大事な話」


「晴陽」


「悲鳴が聞こえれば中に入ってくればいいだろ、何もしねぇよ」



そう言った晴陽は、私にもう一度「話あるんだろ?」と呟くと監禁していた扉をあけた。




「……ドアの近くにいる。何かあったら声出せ…すぐに行くから」



そう言った柚李に、小さく頷いたあと、嫌で嫌で仕方ない晴陽の後を追った。

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