第69話
「もし不満があるなら、あいつらじゃなくて俺に直接言ってこい、対応はする」
車が魔窟に近づこうとした時、何かの違和感がした。窓の外を見れば「動くな」と柚李に言われ、縮まり視線だけを外に向けた。
なんだかいつもと違う雰囲気。
騒がしい。
その原因は分かった。
ガラの悪い人…。
それがいつもの3倍ぐらいいたから。
人人人人人。
なに?
なんでこんなにも人がいるの?
なにかあるの?
そう思って目を見開いた。
「お前を見に来てる」
それに気づいた柚李が、ため息混じりにそう言って。
「…全員、ですか」
「頭を下げてんのは系列。それ以外はクズ。顔覚えとけよ」
そう言われても覚えられるわけが無い。
だって100人は普通にこえてる。
それに動く車の中からマジマジ見れるわけがない。
それは魔窟の入口付近まで続き、敷地内の中はいつものメンバーがいた。
私たちに気づいたらしいメンバーは車からおりる私たちに駆け寄ってくると、「おつかれ様です七渡さん」「こんにちは月さん鞄お持ちします」と、いつもと違う〝待遇〟をする…。
「あの子が?」
「姫?」
「副総長の女」
「流雨さんはまだ来てないの?」
「七渡さんいるよ」
入口付近ではたくさんの声が聞こえ、ここの敷地内には入ってこないものの、物凄い数のギャラリーたちがジロジロとこっちを見てくる。
確実に私を見ている目。
「今日は落ち着くまで外に出れないと思うから、中でじっとしてろ」
「ずっとあの人数が…?」
「まだ増えるよ」
増える、ギャラリーが?
正式に姫になった私を、見に来ているらしい人達。これ以上に増える?嘘でしょ?
「2.3日経てば落ち着く」
2.3日…。
この状況がつづく。
いやだ、
でも、そんなこと言ってられらない。
これを選んだのは私なんだから。
「いつも通り、普通にしてればいい」
「…はい…」
「帰りはどうする?」
私を見に来るなんて…。
そんな大したことじゃないのに…見に来る意味が分からないと思っていると、柚李にそう聞かれ、質問が分からない私は顔を傾けた。
「え?」
「家か?それとも泊まりか?」
「……」
家…。
泊まり?
帰る場所を言っているらしい。
すぐに流雨とホテルに行くのか?って聞かれた事に分かった私は、言葉がつまり。
「…分かりません、流雨に聞かないと…」
私からホテルに行くなんて、言えるわけがなくて。もう流雨に抱かれていることを知っているらしい柚李…。
「分かった」
「……どうして、そんなこと聞くんですか…」
「家まで帰すのが仕事だからな」
柚李の言葉を聞いて、その意味が分かり私は絶望した。
うそ…。
どうして…?
「…流雨が、いるのに…?」
「ああ」
「送りは流雨でしょ…?」
「全力で護るっていうのはそういう事だろ」
近衛隊長の柚李は、今日から私を全力で守ってくれるらしい。そんな柚李は近すぎる距離で歩きながら私を部屋まで連れていった。
──…私との約束を破った晴陽。
そんな晴陽を、すごくすごく殴りたくなった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます