第64話

「いや…、言い方が違ったな。〝仮〟っていうよりも、お前の態度からして族の奴らは〝付き合ってない〟って感じとってた。だから〝姫〟じゃなかった」


感じとっていた…。

付き合ってないと。

でも今は付き合ってるから…?


周りにそう言う態度を見せてしまったから。




「土曜…お前、来なかったな」



流雨とホテルにいたから…。



「正式に姫になったら、どうなるかお前が1番分かるだろ?」



分かるだろ?

なにが…。



「カケルの女として連れてこられた。そんときお前はどう扱われた?」



どう扱われた…。

晴陽に初めてを奪われ、流雨に〝便器〟にされた。勘違いだとしても私はカケルの〝姫〟だったから──…。



また、同じ目にあうと?

捕まると?

弄ばれる。

私が1番分かってる、得体の知れない恐怖。



「なんで…、受け入れたんだよ…」



そう言った柚李はゆっくりと腕を離し。



「今、言ったのでもう1回聞く、晴陽に脅されたのか?そうじゃないのか?お前は流雨の女になりたいのか?」



脅されたといえば──…


どうなるの?




私は〝姫〟じゃなくなるの?


流雨と別れるの?


でも、昨日の流雨を思い出すと、そう簡単に別れることなんてできない。

流雨が私を離すとは思えない。


それに、晴陽がきっと許してくれない。




あの男は、何でもお見通しなんだろう…。



私が、言えないことを。



あの男は、私が柚李を好きな事に気づいている。




どこまでも〝賢い〟男。


私が柚李に迷惑をかけられないことを分かって…。



「……脅されてません」


「月」


「私は流雨が好きです」

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