第65話

これから起こる得体のしれない恐怖よりも、私は柚李を取った。

今まで優しくされた恩返しとでも、いうのだろうか。


ううん、違う。

私が柚李を好きだから。





「…後戻りできないぞ…」


「…はい」


「狙われる」


「…分かってます」


「分かってないから言ってる」


「…」


「…」


「…」


「…月」




何も喋らない私に、何を思ったのか。



眉を寄せ、「……分かった、」と言った柚李は、じ…っと私を見つめ。



その視線は逸らされることは無かった。



「この前は、自分の身は自分で守れって言ったけど」



言ったけど…?


なに?


私に〝賢くなれ〟と言ってきたことのある柚李は、見たことの無い瞳で私を見下ろした。




「近衛隊長として──…、今日から全力でお前を護るよ」

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