第61話
この人は私を〝便器〟扱いした人。
私をあの魔窟を連れてきたのは霧島だけど、連れてくる時脳震盪を起こして気絶させたのも彼だし。
私の中にアレも放出させた。
ザリガニを知っているからと言って私を気に入った男。
大嫌い。
大嫌い。
セックスなんて痛いし苦痛でしかなかった。
晴陽に初めてを奪われ、
流雨に〝便器〟をされ。
柚李にやられるふりされ。
また晴陽に何かの目的で…されて。
そして流雨の彼女になるために晴陽は無理矢理中に入ってきた。
全部全部、苦痛でしかなかった。
ううん、今も苦痛。
抱かれたくないって思ってる。
柚李のために、柚李が好きながら…。
流雨の彼女になった。
分かってる、分かってるのに。
「月、俺ちょっと向こうに顔出してくるから。いい子で寝ててね。2時間ぐらいしたら戻るから」
受け入れることを決めた私は、流雨の体温に慣れてしまった。このふた晩何度も何度も繰り返し行われたせいなのか…。
嫌だって思うのに、口が勝手に開く。
流雨がどんなキスをしてくるか覚えてしまった私は、少し息苦しく思いながら「行ってくるね」のキスを受け止め。
「……どこ、いくの…」
「向こうだよ?」
「む、こ…?」
「ふふ、寝ぼけてるの? 月は今日来なくていい許可貰ったから俺だけ行ってくるから。動いちゃだめだよ」
また軽いキスをしてくると、私に布団を被せ直し、きっちり制服を着た彼の背中が見えなくなることを感じて…。
また死んだように眠ってしまった私を起こしてきたのは、出ていったはずの流雨だった。
あれ?と、瞼をあければ、目覚めのキスかのように流雨の顔がドアップにあって。ちゅ、と離れ「おはよう」と言ってくる流雨に、少しずつ目が覚めてくる。
ぱち、ぱち、と、瞬きをすればにこっりと笑った大嫌いな流雨がいて。
頭がおかしいその人は「ゴム買ってきたよ」とニコニコしながら言うから。本当に泣きそうになる。
「む、り…むりだよ…」
泣きそうになりながらそう言った私に、「そうだよね、また抱いたら止まらなくて泊まっちゃう」と、とんでもないことを言ってくる流雨は「そろそろ送るよ、明日学校だもんね」と、ゆっくりと私の体を抱き寄せた。
──…動けなかった。
動く、事は動くけど。
足が震えて、まるで生まれたての鹿のように、流雨にしがみついた。しがみつかなきゃ本当に崩れてしまいそうだった。
それをいいことに、崩れ落ちないように腰を引き寄せてきて、私の頭にキスをする男。
帰りの車の中では、まだ力の入らない私は流雨の肩を借りていた。甘い雰囲気を出す流雨…。
「また泊まりに行こうね」
首を横にふった私にクスリと笑った流雨は、そのままキスをしてきて。
「今はツンなの?」
と、ずっとずっと嬉しそうにする流雨は、家の前に到着したというのになかなか私を車から下ろしてくれなかった。
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