第51話

柚李は付いてこなかった。

もしかしたら晴陽と何か喋ってるかもしれない…。それとも御幸か…。

私の好きな柚李は暴走族の一員。



私が外に出て待っていることに驚いているらしい。元々外にいた柄の悪い彼らの〝何立ってるんだろう〟って感じの視線が凄く。


それでも私には喋りかけては来なかった。流雨の女である私に話しかける度胸のある人はいないらしい、から。



〝喋らないように〟

そう晴陽に言われたから、私が話しかけなければきっと彼らも私と会話をしない…と思って。




流雨…。何時に来るんだろう。

来て欲しくないな…。

抱かれるのかな。

抱かれるよね。

だって私が流雨を受け入れたから。


私が行為を〝いや〟だと思っていることを分かっていた流雨は昨日、ずっと「やめる?」って言っていた。

勘づいている流雨。

それでも私が〝本当の彼女〟になるなら──…



あの時、「やめる」って言ったら、どうなっていたんだろう。〝本当の彼女〟のままだった?それとも交換条件不成立で送りは柚李になっていたのかな…?





そう思ってずっと視線を下に向けていたら、バイクで遊んでいる柄の悪い人の騒ぐ声がして。

上を見ればどこからどう見ても楽しそうな光景が目に入り、──…少し、いいなって思った…。



中は魔窟なのに、

外は魔窟じゃない…。



私は彼らと関わることはない。

喋ることは無い…。

そう思って再び視線を下に向けようとして。



〝喋らないように〟


さっき、「…お好きに」って言ってこない晴陽を思い出した。


喋るな。

どうして?

どうして喋っちゃいけないんだろう?


〝姫〟だから?

〝姫〟は喋ってはいけない決まりがあるのかな?


ううん、でも、護衛の2人宮本くんと富木くんは喋ってる。それに彼らは「こんにちは」って挨拶はしてくれる…。



──…喋るな



どうして?



流雨が嫉妬するから?



でも流雨は、どちらかと言うと柚李を気にして──




私に、バレてはいけない何かが…あるとか…。

だから〝喋らないように〟って言ったんじゃないかって思ったりして。



……そもそも、晴陽はどうして私を流雨の彼女に?何を企んでいるの?私に何をさせようとしているの…。

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