第44話
こういうシティホテルは初めてだった。というよりもホテルは中学の時に修学旅行で泊まったくらいで。
やけに広いルーム。
奥の方には2つのベットがある寝室があり。それを見た瞬間、すごくすごく帰りたくなった。それでも帰ることが出来ない私は、流雨にされるがまま中に入った。
「シャワーあびる?」
そう言ってきた流雨に、思わず肩が動いた。
シャワー…。そういう目的。
晴陽との交換条件。
柚李を助けるために──…。
私はまだ晴陽に抱かれた後、身なりを整えただけで、シャワーも何もしていなくて。
ゆっくりと頷いた私に、「向こう、バスローブもあるから」と腰に回っていた手が離れた。
足が止まる。
動けない。
頷いたくせに全く足が動かなくて固まる私に、流雨が顔を覗き込んできた。
「──…やめる?」と。
何かと分かっているらしい男は、「浴びたらやれるって、判断するからね?」と、その表情は笑っていなく。
「は、はいって、きます…」
荷物を置き、シャワールームらしき方へと向かった私の背中を見る流雨の顔は見えなかった。
浴槽も高価そうだった。だけどそれよりもこれからの行為を考えれば、いくらするんだろう?とかかんがえるよ余裕もなくて。
晴陽がさわったところを沢山洗った。
もう晴陽が中にいた違和感は消えていた。
今からは、流雨の触り方が体に残っていく。
そう思うと泣きそうになったけど、泣くことも許されない私は、泣く前に蛇口を閉めた。
バスローブを着て、タオルで髪をふき、タオルを頭の上に乗せて部屋へ戻れば流雨は制服のネクタイを外していた。
「飲み物入れたから。俺も入ってくるね」
そう言った流雨は「すぐ戻る」と私の唇に軽くキスをしたあとバスルームの中に入っていく。
お風呂と緊張のせいで喉が乾いていたから、流雨が準備してくれたらしいグラスに入ったドリンクを飲んだ。
そのまま、私の足が逃げ出さないように、私はベットルームに向かった。
こわい、
されたくない、
したくない、
こわい。
でも、流雨の彼女…。流雨が私に懐き、こうして抱かれるのが交換条件だから。
さっき、晴陽に抱かれて良かったと思った。
ううん、良くはないけど。
さっきたくさん泣いたからか、もう泣きそうになるけど涙は零れなかった。
バスローブなんて…初めて着た…。
そんなことを思っていたら、私と同じようにバスローブを着た流雨が戻ってきて。
私が中途半端に飲んだグラスに入った中身を飲んだ彼は、ゆっくりと私に近づいてくる。
髪が濡れているからか、いつものパーマ加減ではなくて。
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