第41話
車まで行く最中も、車の中でも流雨はベタベタと私に引っ付いてきた。流雨は「出していいよ」と運転手に呟くと、また私の頬にキスをしてくる。
柔らかい流雨の唇…。
皆の憧れらしい男のキス。
そんな流雨は運転手がいるのに、覗き込むように顔を傾け、私にふれるぐらいのキスをしてきた。
それを全く拒否らない私に笑みを浮かべる。
「…別に俺は、晴陽に何を言われたなんか聞かないよ」
静かに、運転してる人に聞こえないように、流雨は私の耳元で呟いた。
晴陽に何を言われた…その事にドキ、とした私は自分の手を握りしめた。
「流雨さん…」
嘘だとバレないように…。
「分かるよ?何か言われたぐらい。分からなくちゃただのバカだよ」
「あの、わたし…ほんとうに…」
「晴陽が何考えてるのか分からないけど、俺は別に月がこうして振り向いてくれるならいいよ」
「……」
流雨が、頬を撫でる。
柔らかいその撫で方に、もう一度ぎゅっと手を握り。
「月は〝本物〟の俺の彼女になるの?」
何かを勘づいている流雨は、やけに色っぽく言ってくる。
決して〝バカ〟ではない男。
「俺のこと、好きじゃないって分かるよ。でも彼女になってくれたら本当に月のこと大事にするよ?」
分かってる…。私が嘘をついていると。
これも晴陽の思惑通りなのかな…。
でも、晴陽と体を重ねたという訳にはいかない。流雨がいやで、泣くわけにはいかない。私に懐かせる──…
「もう…いやです、振り回されるのは…」
「うん」
「…いや、なんです…」
「うん」
「私を泣かせないでください…」
「大事にするって泣かせないって事じゃないの?」
「……」
「大好きだよ、ほんとうに」
ぎゅっと、背中に腕を回され抱きしめられる。…私はぎゅっと目をつぶり、作っていた拳をゆるめ流雨の制服をそっと掴んた。
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