第38話

下半身、というより下腹部の違和感が止まらなかった。まだ中にあるような、異物感…。もう何も無いはずなのに、挿入っているウズ…っていう感覚が無くならなくて。


行為後のせいか、少し足も震えていた。



涙が乾ききって、ようやく部屋から出ることが出来て。もうとっくに部屋から出ていた晴陽は呑気に煙草を吸っていた。


部屋にいたのは、晴陽だけ。

ほかの人たちは…と、見渡す私に、「外にいる」とどうでも良さそうに呟く…。



私を流雨の女にしたい晴陽…。



「抱かれて…、彼女になる、ってことでいいの…?それとも懐かせるだけ…?」



そう言った私に、晴陽は笑みを浮かべながら「…お好きに」と言うだけだった。



外にいる流雨に会うために、外に向かう。

晴陽に脅されている私は、歩く足を止めなかった。足が震える…。まだ違和感がある下半身…。




──…外に出れば、怖い人達がたくさんいた。バイクを鳴らしている人、しゃがみこんで煙草を吸っている人。とりあえずガラが悪く。

制服を着ている人もいれば、私服の人もいる。

その中で唯一、誰とも違う制服を着ている彼がいて。

迷うことなく、彼の元へ行こうとする私に気づいたそのガラの悪い人達が「こんばんは」と頭を下げてくる。



その中で私にかけより、「大丈夫か?」と言ってきたのは柚李だった。



柚李…、好きな柚李…。

もう関われない、辛い…、そう思ってしまうのは多分、私が柚李に惹かれてしまっているから。


その感情に蓋をした私は、その人から視線をはなし、無視した。

無視されたことに「…おい、」と私を引きとめようとする柚李。

それさえも無視した私は泣きそうになりながら足を進める。その先にいるのは、大嫌いな彼。



「るな!」と、今日も笑顔で、私を好きらしい人……。



「るうさん…」


「晴陽なんの話だったの? 大丈夫? 酷いことされなかった?」


「大丈夫です…」



そう言って笑った私に驚いたのは、きっと流雨だけじゃない。私を追いかけてきた柚李も軽く目を見開いていた。


だっていつもは反対だから。

いつもは流雨を無視して、柚李と会話をするから。



「るうさん…」



助けて、柚李──…。



「ん?なに?どうしたの?」



にこにこと、首を傾げる流雨…。

逃げたい、助けて、帰りたい。



──…助けて。



「流雨さんに会いたくて迎えに来ちゃいました、中に入ろう?」



にっこりと笑った私は、自ら流雨の腕に自分の腕を絡ませた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る