第33話

どこまでが、計算なんだろう?

どこまでが、彼の未来なんだろう?

やけに頭のいい男は、一体何を考えているのか…。




その日の放課後の魔窟には、晴陽と御幸がいた。とは言っても、御幸は外で男の子と喋っていた。

今日も「ごめんな」と言ってくる優しい柚李。そんな柚李に帰りたいとは言わず、「…大丈夫です」と返事をしたのは初めてだった。




中に入り、煙草の匂いがして。

その匂いの方へ歩く私に、その人は分かっていたような顔をする。座らず、その人の正面に立ち。


その光景に「どうした?」と声をかけてきたのは、柚李。



「……話があるの…」



晴陽はうっすらと笑い、煙草の火を消すと、「2人っきりがご希望?」と上目遣いで私を見つめてきた。



「…ご希望」



強くそう言った私に、目を細めて笑った晴陽はゆっくりと立ち上がった。



「ナナ、ちょっと出てろ、誰も入らせるな。流雨も」



そう言って晴陽は私をずっと監禁していた部屋へと向かう。



「おい、晴陽…」



それを柚李が止めるけど、「姫のご希望な、見張っとけ」と晴陽が言えば、柚李は顔を顰めたあと「…分かった…」と、私に目を向けたあと、外へ行くために私たちに背を向けた。




行かないで、柚李──…




もう二度とそんな事を思わないように、私は扉から出ていく前に、柚李から視線を外した。

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