第32話

〝泣かれるよりはずっといい〟


私にそう言った事がある柚李は、今日も私を送ってくれた。21時30分。今から魔窟に戻ったとして、22時。そして柚李が家に戻るのが23時頃…。小学生ならもう寝ている時間…。



「ありがとうございました…」



そう言って、頭を下げる。柚李は「またあした」と、静かに微笑んでいた。

優しい柚李…。いつも庇ってくれる。

私が〝姫〟だから、仕事をしている男──…



もう一度頭を下げた私は、次の日の朝、柚李に話しかけることが出来なかった。

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