第21話
「──…ありがとうございました」
家まで送ってくれた柚李に、頭を下げた。
時刻は21時30分頃。
よく分からないけど、21時頃まであの部屋にいなければいけない私は、家に前にたどり着くのはいつもこの時間。
それでも一昨日までの流雨の車内のキスを思い出せば、車から降りるのは22時は軽く越えていた。酷い時は全く離してくれなくて23時をすぎに車から出る時もあるから。
こうして21時30分に車から降りられるのは初めてしもしれない…。
流雨に言うことが無かったお礼をすると「…頑張ったな」と、柚李が柔らかい顔をして。
その顔を見てると泣きそうになった。
頑張った…。流雨の扱いを。
「あれで、良かったでしょうか…」
「充分すぎ」
「…よかった、です」
「朝、迎えに来る」
「すみません…柚李さん…。運転してくれる方も、毎日…申し訳なくて…」
「それが俺の仕事だし、運転するやつは交代してるから問題ねぇよ」
仕事…。
こうして柚李が私のそばにいるのは、仕事。
「…仕事…増やしてしまって…すみません…」
家の前で頭を下げる私は、やっぱり柚李と会話をする事が嫌じゃない。…安心する。流雨とは大違い。
何をいえばいい?どうしようどうしようってならないから。
「泣かれるよりはずっといい」
そう言った柚李は軽く笑うと、「またあした」と、別れの言葉を口にした。
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