第15話

──…自覚?




「助けるもなにも、お前に酷い事してるか?」



この人は何を言ってるんだろう…?



「…して…る、…」


「だから、なに?」


「きす、」


「流雨はお前のこと好きなんだよ」


「したく…ない、…」


「ほかは?」


「……るう、やだ、」


「そりゃ、便器にしたからな」


「ゆうりさん、がいい、…ずっと、くるま…かえりも、」


「分かった」


「…ふたり、…」


「2人?」


「ずっといる、…学校…監視、されてる…」


「……ああ」


「…ずっと…ずっと、…陰口いわれる…」


「知ってる、ナナから報告聞いてたし。月がイヤならそいつらの口塞げるよ」


「っ、…」


「俺らの姫に文句言うやつ、すごい度胸だなって思ってたけどな?流雨にやってもらうか?あいつなら…」


「……っ、やめて、…」


「そいつらは月が羨ましいからそんな事を言ってくる、月は俺が認めた女なんだから堂々としてればいいし…。護衛の2人はせめて1人にしようか? もし月が拉致られでもしたら、月も怖い思いする事なるし」



晴陽が流れる涙を指で拭く。



「……わたしは、〝姫〟が、いやなの……」


「ここまで我儘聞かせといて、いやとか言う?」



クスクスと笑う男は、目に溜まった涙も取ってきて。やけに視界はクリアになった。

目の奥が熱いだけ。



「……はるひ、さ」


「他は?なんかある?流雨と陰口と護衛と車だけ?」



クリアに見えた晴陽の顔は、優しく見えて。



「……あんまり…怒らないで…」



そう言った私に、「…努力するよ」とつぶやいた彼。



「今日はこのまま寝な、もう帰ってナナはいないから明日の朝、ナナに家まで送らせる」




そう言った晴陽は、ゆっくりと前かがみになり、「もう流雨を妬かすなよ」と言いながら、先程デコピンした所へと口付けをした。

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