第14話

────はっ、と、目が覚めた。




カーテン越しの窓の外は暗く。

それでも部屋の電気は付けられていた。


いやでも思い出すその景色に、一気に目が覚めて、体を起こそうとすれば、その人の背中が目に入ってきて。


目を見開いた私は、咄嗟に寝たフリをしようとしたけど、その前に私の方へゆっくりとその人が振り向いた。



「起きたか」



多分、私の起きた雰囲気に、気づいたみたいで。


彼と目があい、顔が青くなる私を見て、呆れたように笑っていたのは、どう見ても総長の晴陽だった。



なんで、晴陽が。



いや、そもそも、この部屋は──…

どうして私、ねてたの?

どうして私は、監禁されていた部屋で眠っていたの?あれ?と、少し寝ぼけている頭で寝る前の記憶を探るけど、上手くいかず。



まだ横になっている私の方に近づき、私の頭に向かって手を伸ばす男が怖くて。

「やっ……」と、ぎゃっと目を瞑った時だった。



「このバカ」と、ぱちん、とおでこに小さな痛みが走り。え…?と、片目から順番に目を開けば、晴陽の指先が私のおでこにあって。



デコピンをされたらしい私は、晴陽を見ながらら戸惑う中、体にかけられていたシーツを握った。



え?



「ナナに助け求めんなよ、お前マジでバカ」



柚李に助けを求めた…バカ?


そう言われて思い出す。


さっきのことを。


私は無我夢中で、流雨のキスが嫌で助けてって言ってた。柚李のことを呼びながら。


そしたら、流雨が、…柚李の方に歩いていって…。柚李が「もう限界だろ…」って、言っていたような気がする。



揉めてた後、流雨が戻ってきて──…逃げようとした私を──…流雨がつかまえてきて。

あ、その時たしか、晴陽が……あれ…?





上手く思い出せず、ぼんやりとしていると、「お前、何が不満なんだよ?」と、見下し加減で言ってくる…。




不満…?


不満…。




「言えよ、今なら聞いてやる。流雨がそんなにイヤか?」



流雨がいや。

そんなの当たり前…。

聞かなくても分かるでしょう…?



返事もせず、ただ涙を浮かべる私に、さっきデコピンをした手で私の頭を撫でた。



「…泣くほどいやか?」



やけに優しく、甘く呟いてくる晴陽…。



こわい。

ポロポロと涙がでてきて。

もういやだもういやだと、身を縮こませれば、私の頭を撫でる晴陽が「…そうか」と呟く。




「……おこら、ないで…」


「怒ってるように見えるか?」



そう言う晴陽の顔は涙のせいで見えない。



「こわ、い」


「それで?」


「こわい…よぉ…」


「うん」


「……かえり、たい…」


「あとは?」


「……たすけて…」






そうだ、思い出した。

流雨が、流雨が。

すごく怖い目で私を見てきて。

逃げようとし、流雨につかまったはしたものの、隣にいた晴陽が私を抱きしめてきたんだ。



「おちつけ、流雨。姫としての自覚がないこいつが悪い」とか、何とか言って…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る