第13話
学校が少し遠いらしい流雨は、私と柚李よりも遅れてくる。
柚李と同じ高校らしい晴陽と御幸は先に来てることが多く。
順番で言えば、晴陽御幸。
そして柚李と私。
5人目に流雨が部屋の中に入ってくる。
いつもの定位置になっている晴陽の横に座った私は、唇を噛み締めながら流雨…を、待っている状態で。
「──…ったのか?」
「なにそれやばー」
晴陽と柚李と御幸が何かを話していた。だけど主語が無い内容は、何の話か分からない。
くるくると、私の横に座っている晴陽が私の黒い髪で遊び、「みんな月みたいにいい子だったらいいのに」と、穏やかに笑っている彼は、どうでも良さそうに会話をしていた。
もう、ほんとうに、…我慢できなかった…。
もう、むり、
「さわらないで…」
泣く。
「ん?なんて?」
「さわらないで…っ、」
「よく聞こえなかったなぁ、もっかい言ってみ?」
「……つっ、」
くるくる髪で遊んでいた指先をとめ、さら…と、私の頬を見るように髪を耳にかけてきた男は、「誰に、何を、さわるなって?」と。
笑っている目を少し細め。
声のトーンは変わらないのに。
冷や汗を流した私は「…なんでも、ありません…」と、言うしかなく。
「そう、俺の聞き間違いだったみたい、ごめんね」
そう呟いた男は、私の頭を撫でた。
これが、怖くないって、誰が言えるんだろう?
まるで脅迫。逆らえない。
怖い──…。
そう思って泣きそうになれば、「るな」と、1人だけ制服が違う流雨が、部屋の中に入ってきた。
「会いたかった」といわれ、その人にまた何度も繰り返されるキスに、私の精神は限界に近く。
帰りたい、帰りたい、
もう、〝姫〟なんか、いや──…っ。
どうして〝私〟なの。
抵抗した、沢山その人の体を押した。
もういや、もういや、もういや!と。
いつも泣くだけで、激しく抵抗しない私が、こうして流雨の肩を押すことに、本人も少し驚いたらしく。
「──…るな?」と、流雨が名前を呼んでくる。
だけどそれよりも前に、唾液を零しながら、涙を流しながらそれを言っていた。
たすけて
たすけて、
ゆうりさん。
「っ、…っ、ゆう、り…さ…」
体を震わせ、「…たすけて…」と、自分の顔を両手で隠す。
その刹那、「あちゃー…」と、面白がっている御幸の声が、耳に届いたような気がした。
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