第10話

「…性格悪いんですか?弟さん…」



私の言葉に、少し目を開き、助手席から私の方へと少しだけ顔を動かし視線をこちらに向けた。



「は?」


「柚李さんと似てないって…、だから、悪いのかなって…柚李さんは優しいから……」


「…」


「昨日も流雨さんから、助けてくれました…」


「…」


「わたし、」


「顔が似てないって意味だよ。まあ性格も似てないけどな…弟の方がずっと優しい」


「柚李さん…」


「お前、前にも言ったけど俺を信用するな…」



そう言った柚李さんは、視線を元に戻した。

信用するな…。

そう言われても、もう遅い…。



「…たすけてください…」


「…」


「私を守ってくれるなら助けて…」


「…」


「帰りもあなたがいい…」




グズグズと泣き出す私を、名前も知らない運転手はどう思っているのか。

柚李はどう思っているのか。



「流雨さんから守って……」



そう言った私に、柚李は険しい顔をしていた。

柚李は「…悪い」と呟くだけだった。




優しいけど、私を守ってくれるけど、だけど暴走族の一員である彼は、やっぱり壁があり。



だけどその壁の向こうの優しさにいつも助けられている私は、いつもいつも柚李の顔を見るとほっとしていた。

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