第6話

何分、何十分。

まるで食べるように唇を重ねてくる。

私の酸素を奪うかのようなその舌の絡ませ方に、じわりと涙が浮かぶほど。


床に膝をついていたはずなのに、いつの間にか流雨の膝はソファの上にあった。私を背もたれに押し付けるように、無我夢中で舌を吸ってくる。



「…ン〜…っんっ」



毎日、こう。

まるで当たり前のように、何度も何度もキスをしてくる流雨…。

泣いて嫌がってることを分かっているはずなのに…。


流雨はやめない…。

隣には晴陽もいるのに。

晴陽はどうでも良さそうに私の隣に座っているだけ。

もう私の角度からは、柚李は見えなくて。



本格的に苦しくなってきて、流雨の服を掴んだ。…息が、できない、も、やだ、


助けて。


指先が少しずつ震えてくるのが分かった。



やめてっ、と、、震える指先で、フルフル…と、掴みながら軽くその人を押せば、ようやく唇が離れ。


その瞬間、唾液が外へ零れ落ちた。



「っ、はぁっ…」


「気持ちいい、最高、たまんない」



大きく息をする私の首筋に顔を埋め、ひっ、肩で息をしながら後ずさってもソファがあるからこれ以上後ろにいけなくて。


ちゅ、う、と、吸い付かれる感覚がした。


そして流雨の細めの指先が、制服のスカートをめくり太ももの内側をなぞってきて──…




「っ、やだ、やだぁっ…やめてっ、」



これ以上、流雨の手が上がってこないように震える足を閉じた。それでも「柔らかい」と言ってきた流雨が無理矢理指先を進め。



やだやだやだと、泣きながら大きく首を横にふったとき、



「流雨」と、その人の声が聞こえて……、



「エサの時間じゃねぇのか?」



ぴたり、と、流雨の手が止まり。

流雨の吐息が軽く鎖骨あたりに当たった時、ゆっくりとその顔は離れていく…。



そしてそのまま軽くちゅ…と、ふれるぐらいのキスをしてきた流雨は、「ちょっと待っててね」と笑顔で私から遠ざかり。水槽の方に向かうから、ほ…と、息を吐き。




涙を浮かべ、「エサの時間」と言った柚李の方を見れば、その目はやっぱり閉じられていた。

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