第5話

その5分後、ほど、だった。

黒髪の少しパーマがかけられた、瞳の大きい彼が現れたのは。私の顔を見るなり「るな〜!!」と凄く笑顔で近づいてくる。


ソファに座っている私の前に膝をつき、私のお腹に顔を埋めるように抱きしめてくる男…。



そんないつもの光景に、晴陽はどうでも良さそうにずっと煙草を吸ってるし。

柚李はいつも眉を寄せ険しい顔をし、1人がけのソファで目を閉じ眠っていた。



「会いたかった、だいすき」と、私を痛いぐらい抱きしめてくる男…、流雨…。やめてほしい…。



「ごめんね、ほんとうに。今日もナナが迎えに行ったの?俺が学校近かったら行くのに…ごめんねぇ、一日数秒会えないだけでほんとに涙が出てくるほど辛いよ…。かわいい…。今日もかわいい。なんでそんなにかわいいの?だいすき…」



いつものように、私を抱きしめ、溺愛しているらしい流雨はそのまま私の頬を両手で包む。



いや…、



ほんとにいや、



たすけて。



どうして、私なの…。



「や、だ…」


「やだ?何がいやなの?やっぱりナナの送り迎えがいや?でも俺学校サボれないのどうしよう?」


「ち、が、」



流雨にこうして触られるのが、いやなの。

そう思うのに、流雨の〝怖さ〟を知っている私は、これ以上拒否る事ができない…。



たすけて、とおもって、眠っている柚李に目を向けるけど柚李は気づいてないふりをする…。



「帰りは俺が送るから、許してね。あいしてる、だいすきだよ」


「やっ…ん、っ…!」




いつも。いつも。

いつもいつもいつもいつも。



毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日──…

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