第4話

もう何回目か。ここに来るのは。

意味の分からない〝姫〟になった私は、その幹部しか入れない部屋へと、入らなければならない。


部屋に入るまでにはずらりと並んだバイクと、怖い不良たちがいる。そんな沢山の不良たちは柚李を見ると頭をヘコヘコと下げていた。


それをなんとも思わない表情で歩く柚李の後ろについていく…。いつもの光景。





部屋の中は、煙草の香りがした。

〝彼〟がいる。そう思った瞬間、顔をゆがめ視線を下に向けた。もう…いや…。



その人はソファに座っていた。煙草を吸いながら。私たちが入ってきた事に気づくと、「おいでるなちゃん」と名前呼んできて。



いやだけど、すごくいやだけど。

この人に抵抗できないことは分かってるから。

その人の横に鞄を持って座れば、スマホをさわっていた彼の視線が私に向けられる。



ダークアッシュのような、グレーっぽい髪をし。どちらかというと硬派な顔つきをした彼は、私の顔を見て軽く笑った。



「今日は機嫌悪いの?」



くすくすと。



「あ、不機嫌なのはいつもか」



本当に嫌い。



「晴陽、会いたかった…、ぐらい言ってくれれば俺も嬉しいのにな?」



おもってもないくせに…。



「俺は月の顔見たくて、こうして毎日来てんのに」



私がいなくても、くるくせに…。

その人を涙目で睨みつければ、バカにしたように笑ってきて。



「そんな目で見つめてもだめ、お前は流雨の女でしょ?」



髪をさわる男。



「やめて…」


「なにを?」


「…さわらないで…」


「お姫さまなのにさわっちゃだめなの?」


「……」


「ふ、あほらし」



そう言って煙草をくわえ、それを吸っていた。

〝あほらしい〟

バカにして言ってくるくせに。

「会いたかったよ月」と、いきなり私の頭を腕で包んでくると、煙草を離した唇で、私の頬にそれを当てた。




もう、やだ、…



なんで、こんな…。



……かえりたい……。

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