第一章 試合で見極めろ


とある森林の奥。


そこには大きな屋敷があった。


そこは暗く、光さえ届かない場所。


そんな暗闇の世界でひっそりと身を潜める者たちがいた。



「あー!暇暇暇暇!!ちょー暇!」



黒色の髪に金色のメッシュを入れているその少年はゴロゴロと座敷の中をグルグル回りながらそう言った。


するとその近くにいた翡翠色の髪を後の下の位置に束ねている少年が、重い荷物を抱えながら黒髪の少年のこう言う。



「理久。寝そべっている暇があるなら少しは手伝え」


「へいへーい。ったく。朔弥は人使いが荒いんだから…」



という黒髪の少年は朔弥という翡翠の髪の青年に言われてか、面倒くさそうに起き上がり大きな荷物を運ぶのを手伝う。


そんな中、隅の方で刀の手入れを施している紫色の髪の青年と、無言で目を閉じて黙祷をしている銀色の髪の青年がいた。


理久という少年は刀の手入れをしている紫色の髪の青年に視線を送ると、話しかける。



「しっかし、劾さんもよくやりますよねー。そんなにその魔刀に人の血を吸わせてどうするんです?」



すると先程まで刀を磨いていた劾という紫色の髪の青年は、理久の質問に対し重い口を開く。



「この魔黒刀に眠る壮大な闇の復活のためには、八華の長、花姫の闇の力が必要不可欠。そのためにはこの刀に血を吸わせる必要がある」



そう言うと劾という青年は自分が磨いた魔黒刀に見とれているのか、それを眺めながら理玖にそう言った。


その言葉に疑問を抱いた今度は朔弥が問う。



「魔黒刀に封じ込められた闇の力を復活させるには、花姫の闇の力が必要不可欠…ですか。何のために人の斬って血を?」



それを聞いた劾は魔黒刀を月明かりに照らしながら二人にこう返すのだ。



「決まってるだろ。この刀は人の憎しみ、悲しみ、怒り、恐怖を吸収することで力が増す。今はそれをこの刀に吸収させて力を蓄えているのさ」



月明かりに照らされた魔黒刀がおぞましく黒く光る。


本来なら恐ろしくてぞっとする光もここにいる者には綺麗に見えてしまう。


すると先程まで劾の隣で目を閉じていた銀髪の青年が目を開けて口を開く。



「それで罪のない人々を斬っていったのか?最近では噂になっている」



銀髪の青年は劾に視線を送りながらそう言った。


ここ数日間で何人もの人が突然人斬りにあい、亡くなっている。


その斬られた者の中には必ず蜘蛛の痣がある。


そう町では噂する者が絶えない。


銀髪の青年からそう告げられた劾はちらりとその青年に目を向け、こう返す。



「何だ?不満でもあるのか?遊馬」



その言葉からは少し威圧感を感じた。


たったそれだけの言葉だったが、この青年を敵に回さぬ方がいい。


銀髪の青年はその一言でそれを感じ取った。



「………別に」



遊馬と言う銀髪の少年はそう呟くと再び目を閉じた。


それを聞いていた朔弥が思っていたのか、町の噂を思い返しながら劾にこう言う。



「まあ確かに遊馬の言うとおり、江戸の町では噂になってるのは確かですね…。全く、人間というのは騒がしい。まるで理久がいっぱいいるかのようです」


「どうゆう意味だよ!それ!!」



それを聞いた理久は朔弥の言葉に怒ってつっかかる。


しばらく二人の騒がしい時が続いたが、劾は耳に入っていないのか、窓の外から見える満月を見上げた。



「………あと少し。後もう少しで手に入る。それまで待っていろよ。花姫様」



劾がそう呟いた後、窓から流れ込んでくる風によりその紫色の髪が風に揺れる。


刀と共鳴するかのように自身の青碧色の瞳から黄金のように鋭く瞳を光らせた。


そしてそのまま闇の中へ消えて行ったのだ。

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