第一章 新しい賢者


森林。


そよ風がなびき木々が穏やかに揺れて、川はきらりと光り綺麗な水が流れている。


そんな森の中、とある二人組が待ち合わせの場所へとこの森へ到着していた。



「場所はこの辺りなのだけど………誰もいないわね」



黒と白の武装服を身に纏う二人組が辺りを見渡しながら誰かを探していた。


そのうちの一人、呟いた彼女は雪之丞綴。


八華の一人で歳は十八。


氷を司る雪之丞家の長女で、代々古清水家の護衛を任されている雪之丞家の跡継ぎ。


現在腰にかざしている小太刀の使い手。


朱莉と同じく白と黒がベースの武装服を着ているが、綴の場合は男物らしく長ズボンとなっている。


氷のようなクールな藍色の瞳、綺麗な黒色の髪を露草色の組紐で後ろの高い位置に一つに結んでいる。


結び目から鳴らない鈴が二つ顔を覗かせる。



「どっかで狼に追っかけられてるんじゃないの?



もう一人の彼は風間雲雀。


八華の一人で歳は十九。


風を司る風間家の長男で、現在背中に背負ってる大太刀の使い手。


綴と同じ武装服を着ている。


焦げ茶色のストレートの短い髪で、左側の前髪が頬にかかるほどの長さがあるため霞色の片方の左目が少しだけ隠れてる。


見た目は極度の女顔。


この二人は小さい頃からの幼なじみなのだ。


綴が五十鈴の護衛をしていた頃、雲雀とも仲良くしていたらしい。


まだ綴も将来は花姫に仕えるとは言え、幼すぎるため簡単な護衛しかさせてもらえなかったそうだ。


雲雀も仲良くしてくれるのは綴だけだったらしく、綴には結構懐いてる。


二人は辺りを見渡しながら待ち合わせ場所で人を探している。



「うーん、おかしい。時刻はもう過ぎているはずなのに…」



綴がそう言って周りを見渡す。


すると木の上からガサガサっと音が鳴り、人影が綴に飛びかかった。



「!!!」



綴は襲ってきた人影から素早く避けた。



「つーちゃん!!」


「くっ、敵襲か!?」



雲雀も綴も刀に手を添えて煙りの中の人影に視線を送る。



「へぇ…八華にも女子がいるんだなぁ。というか、着地に失敗したー!!思わず女子の上に乗っかるところだった…。ナイス避けっぷりだね、君」



その人影は煙りの中、姿を表す。


その男はマントと管笠で顔が隠れていて、顔が確認できない。



「何者だ?名を名乗れ。さもなくば遠慮はせんぞ」


「え、ちょ!?待った待った!!さっきの悪気はないんだって!!全く血の気の多い女の子だなぁ」



するとその男は管笠を取って綴と雲雀にその姿を見せた。


真紅色の瞳に焦げ茶色の短髪で少し癖毛がある髪が風により揺れる。


炎のような赤い鞘が特徴の太刀を腰にかざし、綴たちと同じ武装服を身にまとっている青年の姿がそこにはあった。



「初めまして!火神弓絃、二十歳。炎を司りし火神家の者です。遥々九州の方から船でやってきました!以後どうぞお見知りおきを」



その弓絃という青年は自己紹介をすると、にこりと笑顔を向けるのであった。

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