第一章 新しい賢者


古清水屋敷。


新しい賢者を迎えるため、わたしはお色直しをしています。


新しい仲間が増えるんだもん。


盛大に迎えなきゃね。


わたしの名前は古清水五十鈴。


水と闇の力を司る現代の花姫。


黒色の腰まで長いふわふわとした綺麗な髪に、空色の瞳。


そして八華の長でもある。


八華とはこの世界で特殊な能力を持つ選ばれた家柄の者のこと。


その選ばれた者は不穏な闇の力から国を護る使命が任せられる。


その特殊能力って言うのは全部で十。


『闇、光、水、炎、氷、風、雷、霧、土、草』の十種類。


それを古清水家の者は闇と水。


火神家は炎、雪之丞家は氷、風間家は風、雷鋒家は雷、霧ヶ峰家は霧、城土家は土、名草家は草。それぞれの長男や長女、兄弟姉妹の中で一番最初に産まれた者がその力を先代から受け継ぐことができるの。


その家の跡継ぎたちは五つになった時、その家の先代から力を受け継ぐ前に剣術や力の使い方、その家の歴史について学ぶ。


そして次期花姫襲名後、十五を数える歳になった者はこの古清水家の屋敷に送られてくる。


じゃ光は?ってなるよね。


光の力はわたしにも分からない。


もちろん、七人の跡継ぎのうちの一人に受け継がれるんだけど…。


それが誰になるかはバラバラなのだ。


光の力は七家を行ったり来たりしている。


だから誰が持つかは花姫にも分からないのだ。


つまり誰が光の力を持つかは神だけが知る。


その力が誰に引き継がれるかは神様だけが選べる権利があるわけだ。


わたしが着替えていると襖の外から声が聞こえた。



「姫様ー!朱莉です。入っていいですか?」


「はーい!どうぞ」



わたしがそう言うと朱莉が襖を開けて入ってくる。



「失礼しまーす!わあ…姫様きれい…!!可愛いですね!」


「そ…そう?着飾り過ぎてない?」



朱莉はわたしの姿を見て笑顔で駆け寄ってくる。


今日は普段とは違う袿にしている。


綺麗な梅の刺繍が入った薄い黄緑色の袿に、王家から代々伝わる桜の形の簪。


いつもはこのふわふわの腰まで長い黒髪をおろしているのだが、今日は違う雰囲気で纏めてもらっている。


後は召使いにお化粧までしてもらった。



「大丈夫、大丈夫!!これならきっと火神家の賢者も惚れてしまいますよー。何せ、相手は男らしいですしね!」



彼女の名前は霧ヶ峰朱莉。


八華の一人で霧の力を司る短刀の使い手。


わたしと同じ十八の女の子。


茶色の髪にくりっとした可愛らしい菫色の瞳。


白と黒がベースの武装服を着ていて、朱莉の場合は可愛らしい女物の短めのスカートを履いている。


藤紫色の細いリボンで左上の位置に1つに髪を結んでいる。


向日葵の絵が描かれた玉の簪が髪の結び目からちらりと顔を覗かせる。


彼女は霧ヶ峰家の長女であり、現在綴の代わりにわたしの護衛をしている。


綴というのは雪之丞家の長女であり、長年古清水家に仕えてきた雪之丞家の家計の者である。


綴には風間家の長男の雲雀と、火神家の新しい賢者を迎えに行かせている。


火神家の長男は少々やっかいらしいという火神家の者からの手紙があり、二人を行かせたのだが。


にしても遅いな…二人とも…。


わたしは着替えならその二人のことを考えていたのだった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る