第74話

――怜央side—―


俺が浮かれていたせいだ。薫が平気そうにしていたからそのことをすっかり忘れていた。

忘れていなければ、記憶を失わせずに済んだかもしれないのに。



「俺の名前…覚えていないか?」



「ごめんなさい、私あなたと初対面だと思うんですが…」



っ…‼


覚えられているかもしれないという小さな希望があったが、やっぱりだめだったか。

こう言われるかもしれないと思っていても、精神的にくるな。



「怜央、俺が来る前に何があったんだ」


朔が動揺した表情をしていた。無理もないよな。

俺は朔に零斗が飲ませた錠剤のことをすべて話した。



「記憶を消す、だと?そんなものあいつどこで手に入れたんだよ」



「わからない、やはりまだ隠れて動いてるやつがいるのかもしれない」



薫の秘密を知っていたり、監視カメラをつけれたりできたあの人物が関係しているのか、それともリーダーの仕業…。

新たな人物の可能性もある。



「とっ、とりあえず!薫を病院に!」


律が慌てたように電話をかける。


10分後救急車が到着して、薫は病院へ搬送された。

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