失う記憶

第73話

「うっ…!」



「どうした!薫っ」



すっかり忘れていた。あの錠剤のことを。

私は昔から錠剤系の薬が効きにくい体質なのか、いつも効果が遅れてくる。


だから、あの錠剤が40分ほどたってから効き始めたんだ。

頭が痛い…何かが失われていくような感覚がする。



「薫っ、薫っ!…おいっ、誰かあの錠剤の効果をどうにかできないのか!」



怜央が必死に私を助けようとしてくれる。

あぁ、さっきまであんなに笑顔だったのに。私のせいだ。



「怜央、ありがとう。大丈夫、私は大丈夫だよ」



「大丈夫なわけないだろっ…!」



みんな薬に対抗できるものが無いか必死に探してくれてる。

でも流石にもう無理かなぁ。諦めたくなんかないけど。



「怜央…聞いて?」



怜央には伝えないといけないことがある。



「闇來を頼んだよ。私の記憶が無くなっても、私の恋人は怜央なんだから」



まだやらなきゃいけないこともたくさんあったのにな。全部忘れちゃうなんて。



「それと…アジトの地下に私の隠し部屋がある。きっと役に立つはず。パスワードは……パスワードってなんだっけ」



「っ…!」




――ごめんなさい、あなたは誰ですか?

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